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頭の体操も兼ねて、作品にもならないような小ネタを置いていきます。
無事に作品として形になったものはサクサク消していく予定。

【恋したくなるお題(配布)】様より「キスの詰め合わせ」お題です。

<キスの詰め合わせ>
1.始まりの合図のキス 2016/1/29済
2.言葉を封じるキス
3.目を逸らした隙にキス 2016/1/14済
4.キスがその答え 2016/1/24済
5.君からのキス 2016/1/23済
6.指切りの代わりにキス 2016/1/3済
7.温度差のあるキス
8.通信終了後の携帯にキス 2016/1/22済
9.キスの前にお願い一つ 2016/1/27済
10.薬指にキス 2017/1/7済
番外1.キスとキスの合間に(微エロなお題) 2015/12/31済
番外2.不意打ちなキス(無邪気な君へのお題) 2016/1/10済
番外3.痛む場所にキスを(嫉妬まじりの恋のお題)

ノリと勢いだけで書きます。誤字脱字なんて気にしない。特に記載がない限りはバンエレです。





7.温度差のあるキス



 花にまみれて触れるエレインの唇は、いつも冷たく、硬かった。



 温度差のあるキス



 キスを解いても、彼女のまぶたはぴくりともしない。
「エレイン」
 名前を呼んでも、彼女はバンに答えない。一方的なキスを、バンは繰り返していた。
 バンの血を受けて、新しく生まれ変わった妖精王の森は生い茂り、エレインの亡骸を深奥に抱いて守る。鬱蒼と茂る枝の一本、日光を求めて開かれた葉の一枚にいたるまで、彼らの生命の源であるバンの意志に従って、彼女の姿を人の目から遠ざけていた。森に戻ってきた妖精たちでさえ、容易には彼女のいる広間には近づかない。妖精王と呼び慕う、バンの機嫌を損ねることを恐れてのことだった。
 バンがこうしてエレインとの逢瀬を果たしている間は、特に妖精たちは気を利かせて気配を絶っている。彼らが聖女と祀り上げた少女が、死してなお人間の男に辱められていることを疑問に思う者はいなかった。だからこそ手に入れた二人きりの時間に、バンはくっ、と口を歪めた。
「王様ってさ、生贄なんだよね」
 そう言ったのは、太った中年の同僚だった。妖精族だという彼は、とてもそうとは見えない姿でバンにまとわりついていた。その彼が、国民の万歳を受けるリオネス王を見上げてこぼしたのが、その言葉だった。
 大罪人である同僚が、王たる者の何を知るか、バンは知らない。王たる者に、バンは興味さえない。そんな自分がこの森の妖精たちに王とあがめられ、彼の言葉を思い出すというのはどんな皮肉なのだろうか。
 バンはこの森の生贄だ。そして、そのバンをこの森につなぎ止めるために、捧げられたエレインもまた同じだった。
 バンは腕に抱いた、愛しい妖精の顔に触れる。白磁の肌を辿る指に、金色の髪が触れてさらりと流れた。それでもはやり、彼女は目を覚まさない。
「エレイン……」
 これがおとぎ話なら、恋人のキスで目覚めるのがセオリーだった。おとぎ話のような森で、おとぎ話らしい妖精の彼女は、バンに抱かれて死に続けていた。冷たい輪郭に、バンは自分の頬を押しつける。
「エレインっ……」
 欲しかったものは、これじゃない。永遠の命も、王の位も、物言わない彼女も、望まないものばかりがバンの周りには転がっていた。
「死んでんじゃねぇよ」
 こめかみを、頬を、彼女にこすり付けてバンは呻く。移そうとした体温は、時を止めた肌を通り過ぎて空に溶ける。それでもバンは、彼女の華奢な肢体をあたため続けた。
「知ってっか、お前、素っ裸だぞ」
 何もかもをさらけ出した体を、バンにいいようにされていることを、彼女はもっと深刻に受け止めるべきだ。生前の彼女なら、耳まで真っ赤にした顔のまま、バンに突風を叩きつけたことだろう。そんな彼女の、コケモモ色の耳たぶが愛しかった。
「エレイン、エレイン、エレイン……」
 彼女の小さな頬を両手で包んで、鼻先を擦り合せて呼びかける。動かない、冷たい唇に幾度となくバンは自分のそれを重ねた。



バンエレでネクロフィリア(違)は外せません。
2016/2/1 Ban × Elain by hirune wahiko
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