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頭の体操も兼ねて、作品にもならないような小ネタを置いていきます。
無事に作品として形になったものはサクサク消していく予定。

【恋したくなるお題(配布)】様より「キスの詰め合わせ」お題です。

<キスの詰め合わせ>
1.始まりの合図のキス 2016/1/29済
2.言葉を封じるキス
3.目を逸らした隙にキス 2016/1/14済
4.キスがその答え 2016/1/24済
5.君からのキス 2016/1/23済
6.指切りの代わりにキス 2016/1/3済
7.温度差のあるキス 2016/2/1済
8.通信終了後の携帯にキス 2016/1/22済
9.キスの前にお願い一つ 2016/1/27済
10.薬指にキス 2017/1/7済
番外1.キスとキスの合間に(微エロなお題) 2015/12/31済
番外2.不意打ちなキス(無邪気な君へのお題) 2016/1/10済
番外3.痛む場所にキスを(嫉妬まじりの恋のお題)

ノリと勢いだけで書きます。誤字脱字なんて気にしない。特に記載がない限りはバンエレです。




番外3.痛む場所にキスを(嫉妬まじりの恋のお題)



 痛い。と彼女は言った。



 痛む場所にキスを



 「胸が、痛いの」
 エレインの小さな訴えに、バンは顔色を変えた。エレインが両手を重ねて押さえている場所を、バンはまじまじと凝視する。控えめで慎ましくも、ふくらみがある彼女の胸。バンにはないその器官の奥には、バンと同じく心臓がある。そこが痛いと彼女は言う。
 病気か。真っ先に考えたのはそのことだった。もしそうなら、バンでは治せない。心臓に効く薬に持ち合わせはないし、妖精王の森に自生している草で薬効のあるものがどれかもわからなかった。
 バンは頭にこの森近郊の地図を広げ、一番近い人里をピックアップする。医者を背負って連れてくるのにかかる時間を算出したり、人間の医者に妖精の病気が治せるのか否かで悩んで、ようやく妖精族は病気にかからないことを思い出した。
「いや、でもよ、妖精族もかかる新種の病気ってことも」
 だったらなおさら人間の医者では役に立たない。
 どうしたらいい。どうしたらいい。食べるものが悪かったのか。しかしエレインは食事をしない。生活習慣も人間と同じ感覚では語れなかった。まさか空気か。水か。この森全体がエレインには毒なのか。
 叶うものなら連れ出してやりたい。それ以外の方法となると、バンはたったひとつしか考えつかなかった。
「飲め」
「え?」
「生命の泉、これ飲めば治んだろ」
 永遠の命を約束する水なら、どんな病からも彼女を守ってくれるはずだ。森が枯れると言うけれど、それがどうした。ワイルドベリーのエールと、エレインが同じ天秤にかけられると思うのか。
「ちょ、ちょっと待って。バンったら」
 ぐいぐいと腕を引いて泉に向かうバンを、エレインが止める。一刻一秒を争う形相の、バンをどうにかなだめようとエレインは困ったように微笑んだ。
「違うの。病気じゃなくて」
「病気じゃねぇ? 仮病か?」
「ううん。痛いのは本当」
 わけがわからない様子のバンに、エレインの困った笑みがますます深くなる。目を伏せて、長いまつげをぱたぱたと瞬かせて、エレインはもう一度胸に両手を当てて言った。
「ココが痛くなる、原因はわかってるの」
「じゃ、さっさと言え」
 俺が取り除いてやると息巻くと、エレインは「そうじゃなくて」と首を振った。
「取り除いちゃだめ」
「なんで」
「余計に痛くなっちゃうから」
 いよいよ、彼女の言いたいことがわからない。リドルに興味がないバンは、険悪な表情のまま首をかしげた。「わからない?」と首をかしげかえされても、わからないものはわからなかった。
 らちの明かない会話に、バンがキレそうになる間際、エレインは一度深呼吸してから種明かしをした。
「バンがこの森を出て行っちゃったら、って考えると痛くなるの」
 エレインの告白に、バンは耳を疑い、目を見開く。エレインの胸が痛くなる原因はバンで、だからこそ、彼を取り除いてはいけないのだった。
 エレインはずっと、この森にいた。700年だ。彼女は今もここにいて、これからもここにいる。その小さくも逞しい彼女は、赤く染まった上目遣いでバンの反応をうかがっていた。
「あなた無しで、どうやって過ごしていいか……、わからなくなっちゃった」
 700年の孤独に耐えただろうに。
 出会ってまだ、7日も経っていないのに。
 バンがいなければ、息の仕方もわからないと告げるエレインに、バンは言葉を奪われた。そして彼女が両手で隠す、小さな胸に目を向ける。あの内側では、今頃彼女の心臓が大暴れしているのだろう。それも、痛いほどに。
 薬もない、医者でもないけれど、彼女が患うその部分にキスがしたいとバンは思った。バンなりの治癒のおまじないに、きっとエレインは驚く。だが彼女の殺し文句に比べればささいなことだ。
「返事、してくれないの? バン」
 遠慮なんてガラじゃない。バンは、彼女の痛む場所にキスを与えるべく背をかがめた。



コンプリまであと一個……!
2016/2/3 Ban × Elain by hirune wahiko
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