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頭の体操も兼ねて、作品にもならないような小ネタを置いていきます。
無事に作品として形になったものはサクサク消していく予定。

【恋したくなるお題(配布)】様より「キスの詰め合わせ」お題です。

<キスの詰め合わせ>
1.始まりの合図のキス 2016/1/29済
2.言葉を封じるキス 2016/2/6済
3.目を逸らした隙にキス 2016/1/14済
4.キスがその答え 2016/1/24済
5.君からのキス 2016/1/23済
6.指切りの代わりにキス 2016/1/3済
7.温度差のあるキス 2016/2/1済
8.通信終了後の携帯にキス 2016/1/22済
9.キスの前にお願い一つ 2016/1/27済
10.薬指にキス 2017/1/7済
番外1.キスとキスの合間に(微エロなお題) 2015/12/31済
番外2.不意打ちなキス(無邪気な君へのお題) 2016/1/10済
番外3.痛む場所にキスを(嫉妬まじりの恋のお題) 2016/2/3済

ノリと勢いだけで書きます。誤字脱字なんて気にしない。特に記載がない限りはバンエレです。





2.言葉を封じるキス



 「バンッ! あなたって人は!」
 まただ。また、エレインのバンへの小言が始まった。



 言葉を封じるキス



 品行方正とはお世辞にも言えない性分なのは、自他共に認めるところ。初めてエレインに出会ったときも、森に命を救われたのが日ごろの行いのおかげだとは微塵も考えなかった。
「勝手に巣から卵を取らないで!」
「オスローがかわいそうでしょ!」
「いい加減にしなさい!」
 エレインはよく怒る。妖精王の森でのバンの振る舞いはもとより、エールラベルコレクションの話に乗じて聞かせた「賊な」仕事についても柳眉を逆立ててきた。もうとうの昔に済んでしまったことなのに、「なんでそんなことしたの?」「いけないことよ」「反省しなさい」とくどいくらいに言い募るのだ。
 悪いことだなんて百も承知、生きるためには仕方がないとバンが何度嘯いたところでエレインは諦めなかった。今日もまた、偶然出くわしたエリンギオバケの顔にいたずら描きをしているところを窘められた。
「いいじゃねーか。あいつら、何されてんだかわかってねぇんだから」
「だったら、なおさらかわいそうよ。ちゃんと拭いてあげなさい」
「やーなこった」
「バンッ!」
 キャンキャンキャンキャン、それこそ子犬のようにまくし立てる彼女は、どうみても幼女の外見で、そのくせ年上のようにバンに人の道の正しさを説くのだった。人間と妖精とは時間の感覚に開きがあるのだとしても、彼女がバンの何十倍も歳をとっていることは事実だ。
「バン、聞いてるの!」
「聞いてるよ、うるせぇなぁ」
 邪険にする口ぶりの裏で、バンはこそばゆい高揚感を覚えていた。誰かに叱られることが、こんなにも気持ちのいいことだとは思わなかった。
 だって今日まで、バンを叱ってくれる人はいなかった。バンがどんなに盗みを重ねても、悪いことを悪いと指摘してくれる人はいなかった。誰も彼も、バンに浴びせかけるのは罵声で、投げかけるものは礫か暴力のどちらかだった。まして、正しさを説いてくれるひとなど……。
「悪いことをしたら、ごめんなさいでしょ?」
 エレインが初めてだった。バンに、バンの心に、これほどまで親身に関わろうとしてくれたのは。
 髪は艶やか。日の光に、金色に輝く。
 肌は柔らかそうで、近づけば甘い匂いが鼻腔を満たす。
 声は耳に心地よい。
 まるで、世界中の宝を全部その身に閉じ込めたような、キラキラと輝く存在が彼女だった。
「バーン、ごめんなさいは?」
 そんな彼女が、いつまでも目くじらを立てているのはもったいない。どんなに好ましいものが相手でも、飽きっぽいのがバンらしさだ。エレインの怒った様子にもすぐ飽きて、彼女の違う顔が見てみたくなる。
 もっとだ。もっと見せろ。お前の全部。
 欲張りな衝動は、たやすくバンの思考と体を乗っ取ってくる。バンは腕を伸ばした。奪うことに長けた手は、彼女の華奢な腕を捕らえ、もう片方の手が小さな顎を優しく掴む。傷つけないよう、けれど強引に、バンは彼女の自由を奪って引寄せた。
 ちゅ。
 触れ合わせた場所から、奏でられるのはかわいい音色。目的のものを得て、すっと離れたバンの目の前には欲しくてたまらなかったものが転がっている。エレインが、それはそれは真っ赤な顔をしてバンを見ていた。
 大きく丸々としていくのは、彼女の瞳だけ。さきほどまで元気よく動いていた口は閉じられている。耳に刺さるような彼女の説教も途絶えていた。
「いいねぇ、そのカオ」
 そっちのほうがずっとイイ。ニヤリと笑うバンに、エレインはますます二の句が告げないようだ。



とにもかくにもコンプリートォォォォォッ! 褒めてぇ! 誰か褒めてぇぇぇぇ!!
2016/2/6 Ban × Elain by hirune wahiko
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