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苦手を克服しよう!企画テーマその1「学パロ」
ということで、学パロ練習にお題です。


【 学生恋愛 】 by リリィ・ライラックはなぜ死んだ
(どうせなら、見守って)
1.オレンジの境界線  2016/2/29 済
2.友達以上 恋人未満  2016/3/3 済
3.二人だけの世界 2016/3/6 済
4.ランチタイム 2016/3/10 済
5.始まりの放課後 2016/3/15 済

 豚学やら迷七やらオリジナルやら、ごった煮のご都合主義。
 設定の捏造、キャラ改変はいつになくひどいです。
 死んでるはずのキャラが平然と生きてます。
 設定を練りながら書いているので、矛盾ありまくり。

 ノリと勢いだけで書きます。誤字脱字なんて気にしない。特に記載がない限りはバンエレです。





5.始まりの放課後



 「そういや、そうだっけか」
 バンの気のない返事に、エレインはがっかりとした。



 始まりの放課後



 「覚えてないの?」
「悪ィ。興味ねーこと覚えらんねぇんだわ」
 ぽりぽりと白い頭をかいて、笑うバンに悪びれたところはない。二人の出会いの詳細を忘れきっている恋人に、エレインはしょうがないわねとため息をついた。
「私は覚えてるわ」
「さっすが、優等生」
「もう、すぐそうやって茶化すんだから」
 一向に真面目に取り合おうとしない彼に、エレインはツンと顔を背けて見せた。するとすぐに彼の長い腕がエレインの腰や肩に絡みつく。あっという間に虜の身にされると、エレインはバンの膝の上で抱えられた。
 ごく一般的な教室の机の下には、おさまりきらないバンの長い足。自分専用のイスになった彼は、背もたれのほうからエレインに寄り添った。
「それで? 聞かせてくれよ。お前の第一印象」
 エレインの金色の髪から覗く、小さな耳の丸い外殻。その縁をなぞる彼の声に、耳たぶに生えた産毛が逆立つ。甘くて卑怯な声に背筋を震わせながら、エレインはほんのり熱の昇った頬のまま口を開いた。
「怖かったの」
 園芸部の倉庫で、エレインはバンと出会った。彼女しか鍵を持っていないはずの錠は外されていて、電気もつけない倉庫の片隅に人の気配があった。昼間なのに、窓もあるのに、そこだけ暗い一角に、紅い二つの光が見えた。
「幽霊なんて信じてないけど、変質者かしらって」
 けんもほろろなエレインの第一印象を聞かされて、背もたれの彼がカカカッと笑う。笑い声を振り返ると、高い位置から見下ろす彼と目が合った。切れ長の、炯々とした、ルビーみたいな彼の瞳は、エレインの前では舐めかけのドロップみたいに優しくなる。
「今も怖ぇ?」
 背の高さはエレインどころか、周囲にいるほとんどを上回る。リーチの長さも腕の力も、二人の差は歴然だった。きっと彼なら利き腕を封じられていても、エレインを好き勝手できるだろう。
 それでも。
「まさか」
 エレインは唇をほころばせ、バンの膝の上で身を起こす。彼に足元を支えられ、膝立ちしたところでまだ彼の目線には届かないけれど、彼のほうからエレインに合わせてくれるおかげで二人は見つめ合えた。
「こんなかわいいウサギさんを、怖いだなんて思えないわ」
 バンの頬に手を置いて、エレインは彼の紅い瞳を覗き込む。鋭い輪郭が嘘のように、エレインを見下ろすルビーはこのときも、甘ったるい色をしていた。
 舐めてみたい。きっと、舌がしびれるほど甘い恋の味がする。エレインがそんなことを考えているうちに、彼女を支えるバンの手が動いた。制服の上をすべる動きに、スカートのヒダが腿をかすめた。
「俺は、驚いた」
 秘め事を打ち明けるような、バンの声は少し掠れていた。二人をとりまく空気が誇りっぽいのがいけないのかもしれない。
「こんな薄暗ぇ場所で。土と堆肥のニオイしかしねぇで。がらんと寒くて。静かで、昼寝に便利くれぇしか思わねぇ場所に、お前がいたから」
「園芸部の倉庫に随分な言いようね」
 そんなひどい場所に、好んで忍び込んでは昼寝をしていたのはバンのくせにとエレインは肩をすくめる。そうして揺れた金色の髪を、バンの大きな手のひらがすくい上げた。
「光ってたんだ」
 髪をさらりと逃がした手のひらが、エレインの白くて小さな頬を覆う。興味のないことは覚えられない。そう言った同じ口で、彼はエレインの第一印象をすらすらと語った。
「聖女かなんかが、降りてきたかと思ったんだ」
 もう片方の腕が、ぎゅっとエレインを引寄せた。思ったとおり片腕で、あっさりとバンに抱きしめられたエレインは彼の首に腕を回す。
「お上手ね。一体何人に同じこと言ったの?」
「てめぇから女口説いたことなんざ、一度もねぇよ」
 お前が最初で最後だと、バンの甘い声にエレインの恋が震える。蝶が羽を震わせて蜜をたたえた花芯に止まるように、エレインの心はバンの胸に降り立つ。
 園芸部の倉庫の、埃っぽい土嚢の上で二人は出会った。あの時、バンは積み上げた土嚢をベッドにしていて、エレインは土嚢の前で彼を見上げていた。あの時、バンが見たものを、その感動を、彼女は知らない。
「俺は見たんだ」
 お前を。
 過去形で紡がれる声に反して、彼の紅い瞳は今を見ている。エレインの、蜂蜜色の奥に突き刺さる。
「あの日、俺は見たんだ」
 冷えた薄暗がりは海の底。窓からの光に、ぽっかりと陽だまりができていた。舞いあがる埃は、海中を漂う微生物さながらで、時間は地上の速さを忘れゆっくりと歩いていた。
 地を這う魚になったバンは、退化した目をじっと凝らし、撹拌する光の中でこちらを見つめて立ち尽くす彼女を見つけた。
 まるで奇跡だった。孤独な海中にたたずむ彼女は、目を疑うくらい、美しかった。
「やっぱ、思ったとおりだったな」
 お前は俺の聖女だよ。土くさい抱擁に、始まりの放課後を思い出しながら、エレインはバンの優しい声に酔いしれた。




【学パロ設定(覚書)】
 キングと始めた園芸部、しかし現在キングはほとんど部に顔を出さない(理由は考えてない)ので、倉庫の鍵の管理を含めて部の運営は彼女ひとり。
 そこにバンが昼寝に転がり込んだ……という話なる予定です、たぶん。この辺は原作の面影を残したいですね。

【うっすらと考えている時系列】
(交際前)
 2.友達以上恋人未満
 ↓
(交際開始)
 【キスの詰め合わせ】8.通信終了後の携帯にキス
 ↓
 1.オレンジの境界線
 ↓
 4.ランチタイム
 ↓
 3.二人だけの世界
 ↓
 5.始まりの放課後

 1→4→3の順番はまだ悩んでます(もうヤることヤってるのに、長電話したり家庭科室で幸せ噛みしめててもかわいいと思うの)。
 カチッとした連載ではなく、こんな風に年表穴埋め的に続けていく感じでいいのなら、正式にtextページに学パロコーナーを設けても良いかもしれないと考え始めました(単純)。
 もし応援してくださるのなら、↓の拍手ボタンを押してもらえると嬉しいです。一定数の拍手がいただけるのなら、がんばってみようかと……。

 何はともあれ、お題コンプリートです。5つだとそんなにしんどくないですね。
 お付き合いありがとうございました。
 そして改めまして、背中を押してくださったナユコさま、たおさまに、そしてコメントで応援してくださった方々にお礼申し上げます。
 2016/3/15 Ban × Elain by hirune wahiko
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