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頭の体操も兼ねて、作品にもならないような小ネタを置いていきます。
無事に作品として形になったものはサクサク消していく予定。

【恋したくなるお題(配布)】様より「キスの詰め合わせ」お題です。

<キスの詰め合わせ>
1.始まりの合図のキス
2.言葉を封じるキス
3.目を逸らした隙にキス
4.キスがその答え
5.君からのキス
6.指切りの代わりにキス
7.温度差のあるキス
8.通信終了後の携帯にキス
9.キスの前にお願い一つ
10.薬指にキス
番外1.キスとキスの合間に(微エロなお題) 2015/12/31済
番外2.不意打ちなキス(無邪気な君へのお題)
番外3.痛む場所にキスを(嫉妬まじりの恋のお題)

ノリと勢いだけで書きます。誤字脱字なんて気にしない。特に記載がない限りはバンエレです。




6.指切りの代わりにキス



 ただの男の子が、好きな男(ひと)に変わるのはなぜだろう。


 指切りの代わりにキス


 男なら、エレインの周りにもいた。けれど兄やヘルブラムには感じない何かを、エレインはバンに感じとる。バンが、エレインに「そう」感じさせるのはなぜだろう。
 種族の差は、きっと無関係。違う種族だから、人間だからバンが気にかかるのなら、エレインはこの700年の間にあきれるくらいの人間を相手に恋に落ちている。恋。恋。そう、これは恋。バンにだけ、感じるこの心の動きは恋だった。
 どうして彼に? わからないから、エレインは答えを求めてバンを見る。頬の輪郭、首から肩への皮膚の傾き、エレインの前で眇められる眦の角度。エレインの視線に、バンはすぐに応える。彼の真っ赤な瞳の中に、自分がおさまる。恥ずかしくて、エレインはさっと顔を俯かせたら、バンの興味は薄れる。エレインはそっと、彼を見上げる。その繰り返し。
 バンの紅の中にいる、そう気づいたとたん、エレインの体は溶け出しそうになる。じわりと奥から滲む熱は、恋の初期症状に他ならなかった。
「お前になんかしたか、俺」
 男なんて生き物は、概して鈍い。兄とヘルブラムのおかげで、エレインだってそれくらいのことはわかる。例に漏れず、バンはエレインの落ち着かないまなざしを誤解した。
「違うの」
 違うけど、違わない。バンはエレインに何もしない。指一本、触れない。けれど彼の存在は、エレインの恋模様を織っていく。


 透き通る、鉱石の平原。水晶の風景に、命の気配はない。死者があるべき場所で、エレインはかつてを繰り返している。今も、好きなままの男(ひと)を見つめている。
 天を向く銀の髪、高い鼻のライン、大きくてよく動く手。見つめて、見つめて、見つめるたびに、バンを好きになっていく。どんなに見つめても、彼と目が合わないことがあの頃と違っていた。
 声は届かない。彼が話しかけてくれることもない。二人は生と死に別れ、どんなまなざしも水晶越し。それでも胸に広がった恋模様に、バンを見つめることをやめられない。
 だから、気づいてしまった、ジェリコの眼差し。エレインと同じように、彼に恋模様を織り込まれた瞳。違うのは、ジェリコの視線にならバンは応えられるということだ。
「ずるいよ……」
 こんなに見てるのに。誰よりも、想ってるのに。
 恋とは、バラ色の感情だと思っていた。春の風や清らかな音楽で飾り立てられるものだと、疑わなかった。恋が「そう」いうものなら、今エレインの胸によどむ、暗渠のような虚ろな細波は何なのだろう。
 エレインは水晶に映るバンを撫でる。髪の生え際、耳たぶの形、大きく裂けた唇の角にまで。
「早く来て」
 いつか必ず。彼の口から紡がれた「いつか」。いつまでだって待つつもりでいたのに、ジェリコの恋する瞳がエレインを焦らせる。
 早く、早く。お願い。
「早く、私を奪いに来て……」
 約束よ。
 エレインは、つるりとした彼の唇に顔を寄せた。




2016/1/3 Ban × Elain by hirune wahiko
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