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頭の体操も兼ねて、作品にもならないような小ネタを置いていきます。
無事に作品として形になったものはサクサク消していく予定。

【恋したくなるお題(配布)】様より「キスの詰め合わせ」お題です。

<キスの詰め合わせ>
1.始まりの合図のキス
2.言葉を封じるキス
3.目を逸らした隙にキス
4.キスがその答え
5.君からのキス
6.指切りの代わりにキス 2016/1/3済
7.温度差のあるキス
8.通信終了後の携帯にキス
9.キスの前にお願い一つ
10.薬指にキス 2017/1/7済
番外1.キスとキスの合間に(微エロなお題) 2015/12/31済
番外2.不意打ちなキス(無邪気な君へのお題)
番外3.痛む場所にキスを(嫉妬まじりの恋のお題)

ノリと勢いだけで書きます。誤字脱字なんて気にしない。特に記載がない限りはバンエレです。





番外2.不意打ちなキス(無邪気な君へのお題)




 「罰ゲームか?」
 勇気を振り絞ったエレインからのキスに、バンはそう言って眉を顰めた。



 不意打ちなキス



 バンは、自分への好意を信じない。というより、想像できないひとだということ、エレインは彼の心を読む以上に、たった今の彼の反応から痛感した。
「いろんな修羅場くぐってきたからな。表情ひとつで相手の考えくらい読めるっつーの」
 バンは決して、感情に疎い男ではない。むしろその逆で、彼は重ねた齢にしては、ずっと多くの感情を目の当たりにしてきた。
 妹と働かない甥に金をむしられてきた姉が、通りすがりのバンに吐露した、長く積もり積もった恨みつらみ。
 バンが良心から返した主人の金を、店に戻さずドレスを新調した下女のあざとさ。
 持参金目当てで騙した若い娘を、バンの目の前で殴って見せた男の冷酷な眼差し。
 どれもバンの胸に収まっていて、彼は人間の醜さから目をそらさない。一方で、いずれの感情ともバンは距離を置いていた。行き場のないそれらは、バンの心の外側をぐるぐると周回している。彼なりの防衛反応、心の守り方は自分に向けられた好意にすら一歩退いてしまう副作用を及ぼしていた。
「誰かに何か言われたんだろ?」
 そうしてバンは、不意打ちのキスにこめたエレインの想いを受け取ろうとはしなかった。
 この森で、エレインはひとりだった。バンが現れるまで、彼女は700年の孤独にいた。そんな彼女に、好きでもない男へのキスを強要できる誰かがいると思うのか。つじつまの合わないバンの思考は、まさしく彼の防御反応が残した弊害だ。エレインは、受け止めてもらえなかった想いに溢れそうな悲しみをぐっと堪える。
 くじけてはいけない。ここで、諦めてはいけない。
 エレインを案じる、バンの表情は真剣そのものだ。彼は本気で、エレインがやりたくないことをさせられていると信じて、心配して、怒っている。そんな気持ちは、バンからエレインへの好意がなければ成立しないはずだ。
 負けるもんか。
 エレインは強い瞳でバンを見た。もっとしっかり、伝えなければ、彼の心には届かない。払われても、突き放されても、何度でも何度でも飛び込まなければ彼の心の芯には触れられない。
「好きよ」
 エレインは、狙いをシンプルに定めた。
「バンが好きだから、したの」
 これが自分の意思なのだと、誤解しようのない言葉を重ねる。
 この想いは、彼の胸におさまるだけでは納得しない。彼の心の周りを、ぐるぐる回るだけでは収まらない。有象無象の悪意や邪心といっしょくたにされるなんて耐えられない。
「私は、キスしたいくらい、あなたが好きよ」
 襲われたのは、バンの腕に抱きしめられる感覚。鼻の頭から、顔を彼の胸に押し付けられて息が出来ない。耳に触れた、彼の声に心臓すら止まりかけた。
「俺も、してもいいか?」
 届いた。エレインの想いが、バンの心の、一番奥に届いている。
「おんなじこと、してもいいか?」
 ためらいがちな彼が愛しくて、エレインは頷く。罰ゲームじゃないなら、と言い添えて。




2016/1/10 Ban × Elain by hirune wahiko
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